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2016年7月 2日 (土)

「こころ」読了

夏目漱石著「こころ」(青空文庫)読了。

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名前だけは知っている有名な古典ばかりがずらりと並ぶ青空文庫で本を物色していると、読んでみたい本がたくさんあるのだが、そんな中からついつい昔、むか~し読んだ本を改めて読んでみたくなることが多い。懐かしさなのか、あるいは初めて読んだときの青少年時代の自分の心境に立ち返ってみたいからなのか。

「こころ」もそんな一冊。漱石をはじめ、芥川龍之介、森鴎外、志賀直哉、島崎藤村など、毎月わが家に送られてくる日本文学全集を順に読んでいた中学生のとき以来だ。あの全集の新しい本を開くときの紙の匂いはいまだに覚えている。谷崎潤一郎の小説に思春期の胸をときめかしたせいなのか、おらにとってはどこかセクシャルなイメージにつながる匂いだった。

さて、「こころ」である。この小説は主人公の「私」が語る部分と「先生」の手紙の部分の大きく2つの文章に分けられるが、「私」の部分を読んでいる間、「はて、本当にこの本をかつて読んだのだろうか?」と思い続けた。なかなか、覚えているシーンや言葉に出くわさないのだ。しかも、退屈。それでも、なんとか読み続けていて、先生の手紙の部分に入り、先生が自分の下宿に友人のKを呼び寄せる段になって、ようやく思いだした。と、同時に、ストーリーのすべてと結末まで鮮やかに甦ってきた。

ただ、最初に読んだ中学生の頃は乃木大将のことはよく知らなかったと思う。その後、長じるに及んで日清、日露戦争の頃の歴史物にもある程度詳しくなったので、最後のほうで、「明治の精神に殉死」などという言葉が出てくると、それなりの時代背景としての味わいが感じられるのは、中学生の頃とはまたひと味違った読後感を持てたということなんだろう。

巻末に、初出が1914(大正3)年の4月20日~8月11日の朝日新聞での連載とあるから、確かに明治という一つの時代の終わり、節目に書かれた小説であり、作者もそこに何らかの意味を込めたのかもしれない。ただ、おらからみると、登場人物たちのものごとの感じ方、考え方の本質というものは現代に生きる人々のそれとほとんど変わらないと思う。嘘をつくこと、人を裏切ることに対する自己嫌悪感は今の日本社会に通じるものだ。だから、時代を経てもなお色褪せぬ漱石の感性と筆致に驚嘆する。

本郷だの小石川だの旧帝大、現東大周辺の地名が今の自分には実際に行ったことのある土地として受け止められるのも、中学生時分とは違った読み方ができる一因となった。また、先生の手紙はいくつもの章に分かれているのだが、章の最初は「(カギカッコの始め)で始まるのに、章の最後に」(カギカッコの閉じ)がない。そして、手紙の最終章の最後、つまり小説の最後にだけ」がつけられているのに気が付いた。これは、中学生のときは気がついていたかどうか覚えていない。

話がそれるが、小中学校の国語では「」の中の文章にも「。」(閉じ丸)をつけるように教える。しかし、新聞も雑誌も「。」はつけない。かつて新聞記者時代に、国語の先生を取材して、ゲラを見せたら「。」がいるのでは?と聞かれたので、そのことを説明すると、改めて新聞を読んでみて「ほう、初めて知った」と話していたのを思いだした。案外、句読点のあるなしなんて気にかけずに読まれてるものなんだ。

それにしても、明治や大正の頃といえば、そういった文章の句読点の在り方なんてものはまだ確定したルールというようなものはなく、作家個々人が自分勝手に考案、開拓していったのではないかと思うが、先生の手紙の句読点のつけ方一つをみても、文豪の文豪たるゆえんを偲ぶことができる。

さて、おらは中学生時代に明治・大正の小説で読書に目覚めたあと、高校生になると次第に現代文学、とくに五木寛之と野坂昭如、どくとるマンボウ(北杜夫のエッセイもの)、孤狸庵先生(遠藤周作のエッセイもの)あたりに染まっていった。そして、同級生だった色白の女の子に、「たまにはドストエフスキーとかトルーマン・カポーティくらい読みなさいよ」と言われ、「ポ、ポカーティ?」とついポカンとしてしまったりしていたのでした。

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